お抹茶のすべて 2-2 【和束町碾茶の現状】

(エ) 製造
和束町の碾茶炉は平成27年現在、34炉あります。
全てが堀井式碾茶炉で、1炉4,5千万円の建設費です。統計上で計算すると、平成26年度の和束1茶碾茶の生産量が229トンなので、1炉当たり約7トンの1茶生産量になります。(229トン÷34炉≒7トン)2茶碾茶は164トンなので約5トンです。
1炉当たり約12トンの製造量です。和束町の碾茶製造では、1時間に平均で生葉約90キロを流しているところが多く、1時間の碾茶製造量は約16キロです。(90キロ÷5.5≒16キロ)1日15時間の稼働時間としますと、1日の碾茶生産量は240キロ。(16キロ×15時間≒240キロ)1茶30日間で約7トン(240キロ×30日間≒7200トン)になり、統計上の計算に合致します。
反当たりの生葉平均生産量700キロから反当たりの碾茶生産量を計算すると(700キロ÷5.5≒127キロ)127キロになります。1碾茶炉7トンを1反当たり碾茶生産量で割ると(7000キロ÷127キロ≒55)で1碾茶炉で平均5.5町歩の生葉を製造していることになります。
碾茶炉を持っていない生産家が支払う1茶碾茶の加工賃は、荒茶1キロ当たり千4百円前後が多いようです。
2茶碾茶の加工賃は千円前後です。昔は工場内の手作業が多く、人件費も安かったので、十人以上が焙炉場(ほいろば)で働いていましたが、現在ではほとんどの工程が自動化され、2~5名で動かしている工場が多いようです。和束町の碾茶生産家の平均面積は約3町なので、計算上2.5町歩分の賃加工ができます。加工賃が1茶1400円で反127キロなので、(1400円×127キロ×25反≒約444万円)約444万円の粗加工賃になります。2番茶の加工賃が1000円で反90キロなので、(1000円×90キロ×25反≒225万円)約225万円で合計約669万円の加工賃粗収入になります。(しかし、これはあくまで計算上のことです。)

(オ) 流通
和束町で製造された碾茶は約80%以上がJA全農京都茶市場に上場され、入札で京都の茶問屋に販売されます。碾茶の入札に参加する業者は約30社です。宇治など昔からの碾茶生産地の手摘み碾茶は茶問屋との結びつきが強く、90%以上が入れ着けですが、和束のように新しい碾茶生産地では、入れ着けで流通する碾茶は少なく、どこも20%以下です。
京都茶市場での入札は、月水金が碾茶の入札、火木土が煎茶、玉露などの揉み茶の入札です。揉み茶の初市は例年4月25日頃ですが、碾茶は5月15日から20日頃が初市です。
碾茶の入札は1茶で約15回、2茶で約15回、合計約30回の入札があります。

(カ) 単価
京都茶市場の碾茶の入札単価は最高2万円から最低1千円以下のものまでものすごく幅があります。
京都府が2015年12月7日に発表した京都茶市場の平成27年度実績によると、総数量1917トン、総金額約44億円、平均単価2292円で、数量で8%増、金額で16%増、平均単価で7%増と全国の茶価が低迷する中で、京都府だけが非常に好調です。
この好調の要因は抹茶にあります。碾茶のうちハサミ刈1茶碾茶が数量345トン(8%増)金額16億(36%増)平均単価4720円(26%増)と大幅に伸び、また2茶碾茶も数量304トン(38%増)金額約7億(53%増)平均単価2285円(11%増)と大幅に伸びました。京都茶市場の取扱金額の6割以上が碾茶になりました。
和束碾茶は直被覆のハサミ刈が多いので、1茶では3千円台、4千円台、5千円台、の単価が多く、2茶では2千円台が主流です。過去5年間の和束町の1茶碾茶の平均価格が4500円、平均碾茶生産量127キロなので、1反当たり1茶では(4500円×127キロ≒約57万円)平均で約57万円の粗収入になります。2茶碾茶は過去5年間の平均価格が2400円で平均2茶生産量(500キロ÷5.5≒90キロ)が90キロなので1反当たり2茶では(2400円×90キロ≒21万円)平均で約21万円。1茶2茶合計の粗収入で平均約78万円になります。
取材の中で和束の生産者に「これまでの1茶の1反の最高記録は?」と聞くと「240キロで5000円。」と教えてくれました。和束ハサミ刈碾茶1茶で反120万はすごいです。反当り生葉生産量1300キロを超えても、品質の良い碾茶さえ製造すれば、中山を超えた6月の製造でも5000円以上の価格は珍しくありません。揉み茶ではこんなことはあり得ません。収量が増加して、而も単価が上がるのが碾茶の魅力です。

以上、1月号で「和束町はいかにして碾茶の主産地になったか?」2月号で「和束町碾茶の現状」について、書きました。私の取材に快く応じていただきました生産家の皆様、JA京都やましろの皆様、誠にありがとうございました。

 

(2016年2月掲載)

前のページに戻る / 一覧に戻る