お抹茶のすべて 8-2 【「抹茶問屋の仕事」その2】

(2)加工用碾茶の買い方
加工用抹茶の原料碾茶の審査方法はお点前用碾茶とは違い、もっと単純です。
①湯はしません。茶市場の準備する3点セット(荒茶、浸出液、茶滓)で判断します。
②しぼりません。全ての産地を入札します。人は選びません。品種は選びません。
加工用の入札では150点ほどを30分から40分で見なければならないため、手触りと外観と水色と滓色と骨の量を見て瞬時に値段を決めます。

(ア)手触り
碾茶荒茶を拝見盆の上から手のひらでそっと押さえます。手のひらにふわーと柔らかく感じる葉薄い碾茶は買います。掌に刺さる感じのもの、硬くゴリゴリしているもの、重たく感じるものはダメです。

(イ)滓色と外観
明るく冴えた緑は良い。暗く冴えない緑はダメ。黄色い、赤い、黒いもダメ。
外観の色よりも、滓色のほうを重要視します。それは、外観の色よりも滓色のほうが、挽き色に直結するからです。滓色は湯から揚げたときは全てが同じように綺麗な緑色に見えます。時間が経過すると、品質の良いものは色の変化が少ないのですが、品質の悪いものはだんだん色がはげて、くすんだ緑、黄ばんだ緑、暗い緑、赤みの緑に変化していきます。
ですから、湯から揚げた直後の滓色は見て判断してはいけません。時間が許すなら15分から20分後に見るのが正確です。

(ウ)水色
欠点の水色以外はあまり気にしなくても良い。

(エ)骨の量
加工用碾茶の場合、骨の量を考えることが重要です。
拝見盆に貼ってある札には、製造年月日、生産者住所氏名、工場名、品種、個数のほか、碾茶の場合は数量と内荒骨が記載されています。
数量100kg、内荒骨15kgとあれば、葉は85kgということです。工場によって、荒骨に少しの葉が混じっていることがありますが、荒骨より薄葉を選りだすのは非常に手間がかかりますし、選りだした葉は品質が悪くて、元の葉に混ぜることが出来ません。よって、荒骨は葉と一緒には仕上げしません。
荒骨だけを貯めておき、葉の仕上げが終わった後にまとめて荒骨だけを仕上げします。同じ3000円で仕入れた荒茶でも荒骨が10%ですと3334円の葉になりますし、20%ですと3750円の葉になってしまいます。ちなみに、荒骨を除いた葉だけを仕上げしますと、平均で90%から95%の歩留りになります。同じ3000円で仕入れた碾茶でも、荒骨10%の場合は3705円の仕上げ薄葉になり、荒骨20%の場合は4167円の仕上げ薄葉になり、462円の差がつくことになります。ですから、加工用碾茶の入札では、荒骨の量を計算しながら、値段をつけなければなりません。
しかし、1番茶のお点前用碾茶の入札では、荒骨の量を考えてはいけません。品種にもよりますが、品質の良い茶は、茎の太い茶の木からしか出来ないためです。ハサミ刈りでも芽数型の茎の細い茶園からは品質の良い荒茶は出来ません。


プロフィール
桑原秀樹(くわばらひでき)
株式会社 桑原善助商店 代表取締役社長

昭和24年、宇治郡東宇治町(現宇治市)生まれ(66歳)
昭和48年、早稲田大学政経学部卒
昭和49年、㈱桑原善助商店 社長就任
平成4年、京都府茶業連合青年団 団長
平成11年 日本茶インストラクター協会 副会長兼関西ブロック長
平成14年、NPO法人日本茶インストラクター協会 副理事長兼関西ブロック長
平成26年、日本茶AWARD2014 実行委員長
著書 「抹茶の研究」「お抹茶のすべて」

*抹茶問屋の仕事に関する写真を集めています。
(主に明治、大正、昭和戦前期の古い茶業写真を集めています。)

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